近年、業務効率化や顧客対応の強化を目的として「チャットボット」や「AI」の導入を検討する企業が増えています。しかし、「チャットボットとAIの違いがよくわからない」「どのように選べばよいのか」といった疑問を抱える担当者が多いのも現状です。

そこで本記事では、チャットボットとAIの基本的な違いから、それぞれの種類、導入目的に応じた活用法まで詳しく解説します。ビジネスの現場で適切に判断・活用するための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。

なお、SHIFT AIでは、生成AIを活用したチャットボット導入に向け、基礎から活用法まで学べるAI研修や、課題に応じた導入支援・コンサルティングを提供しています。

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チャットボットとは?基本をおさらい

近年、チャットボットという言葉をよく耳にするようになりましたが、実際にどのような仕組みで動いているのか、どこまでの対応が可能なのかを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。

まずは、チャットボットの基本的な定義や特徴を押さえておきましょう。

チャットボットの定義

チャットボットとは、「チャット(対話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、データベースに沿ってユーザーからの質問や依頼に対してリアルタイムで応答する技術を指します。

対話型のデジタルアシスタントで、人間とテキストベースの会話を自動的に行うシステムです。現代のチャットボットは単純な応答だけでなく、情報検索や予約管理、おすすめなどさまざまな機能を備え、企業のカスタマーサポートや個人のバーチャルアシスタントとして活用されています。

チャットボットの仕組み

チャットボットの仕組みの多くは「ルール型(シナリオ型)」と呼ばれる方式が採用されています。これは、あらかじめ用意された質問と回答のパターンに基づいて、ユーザーの入力に対して決められたフローで応答する仕組みです。

ユーザーがどちらかの選択肢を選ぶことで会話が進むタイプが一般的で、FAQ対応など想定される質問がある程度決まっているケースに適しています。

シンプルで導入しやすい一方、生成AIと比べて予期しない質問には柔軟に対応できないこともあります。

AIとは?チャットボットにどう関係するのか

AIがチャットボットに組み込まれることで何が変わるのかを理解しておくことが、導入判断や運用の質を高める上で重要です。ここでは、AIの基本的な仕組みと、チャットボットとの関係性について詳しく見ていきましょう。

AI(人工知能)とは

AI(人工知能)は、人間のように学習・判断し、状況に応じて最適な行動を選択できる技術の総称です。従来のAIは主にデータ分析や画像・音声認識といった識別や分類に強みを持っていましたが、今注目されているのが「生成AI(Generative AI)」です。

生成AIは、膨大な学習データをもとに、新しい文章・画像・音声などのコンテンツを自動的に生み出す能力に特化しており、従来のAIとは異なるクリエイティブな分野で力を発揮します。このように、AIは進化を続けながら、分析から創造へと活用の幅を広げているのです。

AIを搭載したチャットボットとは?

AI非搭載型チャットボットでは、「Aという質問にはBと答える」といった事前に設定されたルールに従って応答するため、想定外の質問には対応できないという課題がありました。

一方で、AIを搭載したチャットボットは、入力された文を分析し、文脈や意図をくみ取った上で応答するため、自然でスムーズなコミュニケーションが可能です。

つまりチャットボットがユーザーとのインターフェース(窓口)として機能し、AIは裏側で動作する“思考エンジン”のような役割を担います。

AIアシスタントとの違い

AIアシスタントは、チャットボットと似た機能を持ちながらも、より高度なやり取りが可能な技術です。大きな違いは、音声と文字でのコミュニケーションに対応している点で、スマートスピーカーやスマートフォンの音声操作機能のように、ハンズフリーでの利用ができることです。

また、AIアシスタントは複数のデータソースや外部のシステムと連携しながら、ユーザーとやり取りした会話を文脈として理解し、異なるアプリケーションでもスムーズな対応ができます。

チャットボットとAIとの違い

チャットボットはインターフェース、AIはプログラムという役割の違いがありますが、両者は密接に連携し合いながら機能しています。ここでは、チャットボットとAIチャットボットの機能や技術面における違いを具体的に解説します。

機能・技術の違い

<ルール型チャットボット(AI非搭載)>

ルール型チャットボットは、トレーニングデータによってあらかじめ設定されたキーワードに沿って決まった応答を返す仕組みです。「はい」「いいえ」といった選択肢をユーザーに提示し、誘導する形が一般的です。

そのため、想定された質問には正確に答えられますが、想定外の質問や表現の揺らぎには対応が難しいという弱点があります。記事内でも触れたとおり、FAQ対応や手続き案内など、質問内容がある程度パターン化されている業務に向いています。

<AI型チャットボット>

AI型チャットボットは、ユーザーの入力内容を分析し、意図や文脈を理解した上で、最適な回答を生成するのが特徴です。

自然言語処理(NLP)のアプローチや機械学習などの技術を用いて、辞書や知識ベースを参照しながら、柔軟な応答が可能です。

例えば、表現が多少異なっていても、同じ意味と判断できるため、どのような質問に対しても自然な形で回答できます。複雑な業務対応や、多様なニーズに応える場面で力を発揮します。

開発・運用コストの違い

<ルール型チャットボット(AI非搭載)>

ルール型チャットボットは、初期開発が比較的簡単で、短期間に低コストで導入できるのが特徴です。あらかじめ想定されたFAQやシンプルな問い合わせへの対応には十分対応可能です。導入ハードルが低いため、スモールスタートにも適しています。

しかし、運用が進むにつれてユーザーからの想定外の質問が増えると、その都度シナリオの修正や追加が必要になります。この作業は基本的に手動で行うため、メンテナンスの負担が徐々に増大するというデメリットがあります。

<AI型チャットボット>

AI型チャットボットは、導入時に大量の学習データを整備し、アルゴリズムを調整する必要があります。そのため、初期開発のコストや期間はルール型より大きくなります。構築に数ヶ月〜半年以上かかることもあり、初期段階での投資が必須です。既存のツールを導入する場合も費用が月額や年額でかかるケースが多いです。

しかし、運用が安定すればAIがユーザーの発言を学習・分析し、自動で回答精度を高めていくため、手動による更新頻度を抑えられるケースもあります。長期的には、初期投資を回収しやすい“成長型の運用モデル”として機能する可能性があるでしょう。

向いている用途・業務の違い

<ルール型チャットボット(AI非搭載)>

ルール型チャットボットは、質問内容があらかじめパターン化されている業務に適しています。例えば、営業時間や所在地、手続きの流れなど、定型的で回答が決まっている問い合わせに対しては、ルール型でも十分な対応が可能です。

ユーザーの選択に応じて適切な回答に誘導する形式のため、情報を簡潔に伝えたい場面や、業務マニュアル的な対応におすすめです。

<AI型チャットボット>

AI型チャットボットは、表現の違いや予期しない質問にも対応できる柔軟性を備えており、内容が複雑・多岐に渡る問い合わせに向いています。例えば、「手続きは昨日済ませたが、その後どうなっているのか知りたい」といった文脈を含んだ質問にも、意図をくみ取って回答することが可能です。

特に、住民相談やカスタマーサポート、営業支援など、個々の問い合わせに対して状況に応じた対応が求められる業務においては、AI型の強みが活かされます。

また、多言語対応やパーソナライズ対応にも優れており、幅広いユーザー層にサービスを提供したい組織に効果的です。適切な学習と運用体制が整えば、業務品質と比例して顧客満足度の向上が期待できます。

ビジネス活用事例|チャットボットとAIの可能性

ここからは、AIチャットボットがどのように業務に活かされているのか、ビジネスシーンでの導入事例を具体的にご紹介します。導入によって得られる効果や現場での使用方法を知ることで、自社での活用イメージをより明確にできるはずです。

カスタマーサポート

カスタマーサポートの現場では、AIチャットボットの活用が特に進んでいる分野の1つです。よくある質問(FAQ)への対応を自動化することで、オペレーターに届く電話やメールの件数を削減できます。

例えば、「注文確認メールが届かない」「返品の手続き方法を教えてほしい」といった、日常的・定型的な質問は、AIチャットボットで十分に対応可能です。顧客は24時間いつでもすぐに答えを得られるようになり、待ち時間やストレスの軽減にもつながります。

一方、複雑な問い合わせや個別対応が必要な内容については、人間のオペレーターへ迅速に引き継ぐことで、対応の品質を保ちながら業務の効率化を実現できます。

AIチャットボットと有人対応を組み合わせることによって、サポート体制の強化と業務負荷の分散が可能になるでしょう。

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マーケティング・営業支援

AIチャットボットは、マーケティングや営業活動の領域においても強力なツールとして活用されています。顧客の過去の行動データや購買履歴をもとに、一人ひとりに合わせた製品の提案や情報提供を自動で行うことができ、個別対応の手間をかけずにパーソナライズされた体験を提供できるのがメリットです。

また、営業活動の起点がこれまでの対面中心からインターネット上のチャットへと移行することで、商談化までのスピードが上がり、見込み客の育成(ナーチャリング)にもつながります。

その他にも、働き方改革や残業時間の上限規制により、限られた時間で成果を出す必要がある中で、営業担当者の“隙間時間”を活かした対応が可能になる点も注目されています。

チャットボットが一次対応を担い、商談に発展しそうな相手だけを営業担当が引き継ぐといった形で、リソースの最適化に役立つでしょう。

関連記事:AIマーケティングとは?仕組み・活用事例・導入メリットなどを徹底解説

社内業務効率化

AIチャットボットは、社外向けだけでなく、社内向けの問い合わせ対応にも活用が広がっています。例えば、人事や総務、情報システム部門に寄せられる「よくある質問」への対応をチャットボットに任せることで、担当者の負担を軽減することが可能です。

業務時間外や昼休憩中でもチャットボットが応答するため、職員・従業員は都合のいいタイミングで情報を得られ、対応のタイムロスが減少します。特に、リモートワークやフレックスタイム制度が導入されている職場では、24時間対応のメリットは大きいと言えるでしょう。

さらに、チャットボットを活用することで、誰がどのような問い合わせをしているのかをデータとして蓄積できるという利点もあります。問い合わせ内容の傾向を分析することで、業務マニュアルの改善点や職員教育の課題が見えてくるなど、業務全体の質の向上にもつながります。

チャットボット×AI導入の成功ポイントと注意点

AIチャットボットは便利なツールですが、導入すればすぐに成果が出るというものではありません。期待した効果を確実に得るためには、事前の準備や明確な目的設定、運用体制の整備が不可欠です。

ここでは、導入を成功させるための重要なポイントと注意点をまとめました。ぜひ導入を検討する際の参考にしてください。

「何を解決したいか」を具体化する

AIチャットボットを導入する前に、まず必要なのが「チャットボットで何を解決したいのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なまま導入を進めてしまうと、成果が見えず、「結局成果が出なかった」という結果につながりかねません。

例えば、以下のような目的が挙げられます。

  • 問い合わせ対応の時間を削減したい
  • 夜間の窓口対応の代替手段として活用したい
  • 顧客への対応速度を上げたい

このように、具体的な課題と解決策としてチャットボットの役割を定めることが大切です。

また、導入目的がはっきりしているほど、シナリオ設計やAI学習の方向性が定まりやすくなります。関係部署と「なぜチャットボットを使うのか」という共通認識を持っておくことが、導入後の運用・改善フェーズにおいてトラブルを防ぎ、効率よく進めていく上でも効果的です。

自社の課題・規模・リソースに合った方式を選ぶ

AIチャットボットには、ルール型・AI型・ハイブリッド型といった複数の方式がありますが、「高機能だから良い」という理由だけで導入を決めるのは危険です。それぞれの方式には向き・不向きがあり、導入する組織の業務内容や体制に応じて適切な選定を行う必要があります。

例えば、問い合わせ内容が定型的で、パターン化しやすい場合は、シンプルなルール型チャットボットで十分に対応できます。FAQや手続き案内など、限られた質問に対して確実に答えることが求められる場面では、むしろルール型のほうが構築・運用の手間も少なく、効果を発揮しやすいでしょう。

一方で、質問内容が多岐にわたったり、表現の揺れや文脈理解が必要な複雑な問い合わせが多い場合は、AI型あるいはルール型とAI型を組み合わせてカスタマイズできるチャットボットが適しています。住民相談窓口やカスタマーサポートのように、問い合わせの幅が広く、応答の柔軟性が求められるシーンでは、AIの力が欠かせません。

また、人的リソースが限られている場合は、まずはルール型から開始し、運用データを蓄積しながら将来的にAI型へ段階的に移行するという方法もおすすめです。最初から完璧を目指すのではなく、課題や規模に合わせて最適な方法を選ぶことが、チャットボット導入成功のカギとなるでしょう。

セキュリティ対策を徹底する

AIチャットボットの導入において、忘れてはならないのがセキュリティ対策の徹底です。特に公共機関や顧客情報を扱う企業では、セキュリティの甘さがそのまま重大な情報漏洩につながる可能性があります。

実際、チャットボットはユーザーとのインターフェースとして常に開かれているため、データの不正取得、フィッシング攻撃、悪意あるコードの注入といったリスクにさらされています。トラブルを未然に防ぎ、安全な運用を実現するには、技術面・運用面での対策が必要です。

具体的には、ユーザー入力に対する検証処理やサニタイジング(無害化処理)を行うことで、不正なコードやスクリプトが実行されるのを防ぎます。

また、通信経路におけるデータの暗号化や、管理者・ユーザーごとのアクセス権限の明確化といった権限管理も重要です。これらの対策を設計段階から組み込むことで、堅牢なセキュリティ基盤を構築できます。

導入後は改善をする

AIチャットボットの導入は、決してゴールではありません。特にAI型の場合、導入後も継続的に「学習」と「改善」を行っていくことが精度の維持と成果向上につながります。

初期構築の段階で一定の精度を出せたとしても、運用を放置してしまえば、ユーザーのニーズと逸れた回答をするなど、期待に応えられない恐れがあります。

そのため、運用の段階では、日常的にログを分析することが重要です。「どのような質問に適切に応答できなかったか」「どの回答がユーザーの期待とズレていたか」といった情報をデータとして把握し、それに基づいてFAQの見直しやシナリオ改善を行いましょう。

まとめ︰AIチャットボットを活用して業務を効率化しよう

チャットボットは、今や問い合わせ対応、業務効率化にとどまらず、営業支援や社内DX、住民サービスの向上など、あらゆる分野で活躍しています。特にAI技術と組み合わせることで、これまで人の手が必要だった複雑な対応もでき、業務がスムーズになります。

今後のトレンドとしては、生成AIとの連携による対話品質の向上や、マルチモーダル対応(音声・画像・動画の理解)といった分野にも注目が集まるでしょう。

ただし、こうした高度なAIチャットボットの導入・活用を成功させるには、信頼できるパートナーの存在が不可欠です。

SHIFT AIでは、自治体・企業問わず、業務課題に合わせたAIチャットボット導入の支援を行っています。企画立案から要件整理、構築・運用までを一貫してサポートし、成果に直結するAI活用を実現します。

AI導入で業務の効率化やサービス品質の向上を目指す企業・自治体の方は、ぜひSHIFT AIにご相談ください。

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