「AIは導入した。けれど、現場では誰も使っていない」
「PoCで止まってしまい、横展開ができない」
「活用事例を探しているが、自社ではイメージが湧かない」
――そんな声が、さまざまな企業から聞こえてきます。いま、多くの組織が「AI活用が進まない」という壁に直面しています。
その原因は、ツールの機能や精度ではありません。また、現場の理解不足やスキルの未熟さだけでもありません。
背景にあるのは、“AIリテラシー”という共通基盤が組織に欠けているという構造的な課題です。
本記事では、AI活用が進まない企業に共通する「3つの壁」を明らかにしながら、その根底にあるリテラシー不在という問題の正体を解き明かします。
そして最後には、社内でAI活用を推進するためにまず取り組むべき打ち手まで具体的に紹介します。
\ AI活用が「一部の人」だけになっていませんか? /
AI活用が進まない3つの原因とは?現場が止まる理由を解説
生成AIをはじめとしたAIツールは、導入そのものが目的ではありません。
にもかかわらず、多くの企業で「現場で使われない」「一部の人しか使えない」「結局、成果につながらない」という事態が起きています。
ここでは、そうした状況に共通する“3つの壁”を整理します。
業務とAIが結びつかない「目的不在の導入」
「ChatGPTを導入しました。でも、何に使えばいいのか分かりません」
これは、多くの現場から聞かれる声です。原因は明確で、業務設計の中にAI活用の位置づけがされていないから。
ツールありきで導入され、活用目的や対象業務が社内で共有されていないため、現場は戸惑うしかありません。
ツールの導入は手段であり、「何のために、どの業務をどう変えるのか」という視点がなければ、活用は定着しません。
活用が属人化し、「一部の人だけのもの」になっている
「うちでは情シスがAIを試しているらしい」
「○○さんがプロンプト詳しいけど、他の人はよく分かってない」
これは、AI活用が個人任せ・有志任せになっている典型例です。
組織としての展開設計がされておらず、結果としてノウハウは属人化し、全社には波及しません。
このような状況では、一部の“意識の高い人”だけが使い、その他の社員は「AIって難しそう」「自分には関係ない」と思ってしまいます。
「学ぶ時間がない」職場の構造的問題
「AI活用を学びたいが、日々の業務が忙しくて…」
これは、AI導入に意欲がある企業でもよく聞く悩みです。
ここで問題になるのは、“時間がない”ことそのものではなく、「AI活用は個人が自発的にやるもの」として扱われていることです。
育成が制度として整備されておらず、教育の責任が現場任せになっている――この構造こそが、本質的な課題です。
このような“3つの壁”が、AI活用の前進を妨げています。
そして、それらに共通しているのが、組織としての「AIリテラシー不在」という根本課題です。
その背景にある「AIリテラシー」の不在とは?
前章で紹介した“3つの壁”――目的不在の導入、属人化、育成の不在。
これらはすべて、組織としての「AIリテラシー」が欠如していることに起因しています。
ここでは、「AIリテラシーとは何か?」そして「なぜそれが必要なのか?」を改めて整理していきます。
「ツールの使い方=リテラシー」ではない
AIリテラシーと聞くと、「ChatGPTの使い方を学ぶこと」だと誤解されがちです。
しかし、実際にはもっと広い意味を持ちます。
たとえば、次のような問いに答えられる状態が、真のAIリテラシーです。
- どの業務にAIを使うべきか判断できるか?
- AIの出力結果をどう評価するか、精度の限界を理解しているか?
- 社内で安全に活用するためのルールやリスクを理解しているか?
つまり、ツールの操作スキルではなく、「活用判断力」や「リスク認識」も含めた包括的な素養が求められるのです。
🔗 参考:AIリテラシーとは何か|育て方・研修設計・定着支援まで企業向けに徹底解説
「使える人材」は“育てる”もの
AI活用の成否は、テクノロジーの有無ではなく、人材の状態にかかっています。
「詳しい人が社内にいてくれたらいいな」と思っていても、何もしなければ、その人材は育ちませんし、定着しません。
また、AI人材は外から連れてくればよいという話でもありません。
重要なのは、自社の業務を理解している既存社員に、AIリテラシーを備えさせることです。
そのためには、「使って学べ」ではなく、組織として育てる仕組み(=育成設計)が必要になります。
AI活用を促進するために、企業が今すぐ取り組むべき3つのアクション
リテラシーがなければ、どれだけ良質なツールを導入しても活用は進みません。
では、どうすれば“使えるだけ”の段階から“使いこなせる組織”に変わっていけるのか。
ここでは、企業が今すぐ取り組むべき具体的なアクションを3つに整理して紹介します。
業務単位でのユースケース棚卸しから始める
まず取り組むべきは、「どの業務でAIを活用できるか?」の可視化です。
- 定型業務の中で、自動化・効率化できる部分は?
- 情報収集や資料作成など、生成AIが得意とするタスクはどこか?
- 業務フローの中で、試験的に導入しやすい工程は?
こうしたユースケースを“業務起点”で棚卸しすることで、AI活用の全体像が見えてきます。現場巻き込み型で進めることが、定着への第一歩です。
全社共通の“AIリテラシー”定義を持つ
多くの企業で陥りがちなのが、「部署ごとに温度感が違う」状態です。
営業部は興味津々、情シスは慎重、管理部門は無関心――これでは全社での活用は定着しません。
そこで必要になるのが、部門や職種にかかわらず共通認識として持てる“AIリテラシーの定義”です。
何を理解していれば「使いこなせる」と言えるのか。
どういうレベルで何を求めるのか。この基準を明文化することで、社内の認識が揃い、育成設計もしやすくなります。
「育成の仕組み」を社内か外部パートナーで設計する
どれだけリテラシーの重要性が認識されても、それを“育成する仕組み”がなければ実現しません。
- 研修を誰が設計するのか?
- どう評価し、定着させるのか?
- 継続的な学びをどう仕組み化するのか?
これらは多くの企業にとって“手つかず”の領域です。
そこで有効なのが、外部パートナーを活用して立ち上げ初期の設計を支援してもらうこと。
時間もノウハウも不足しがちな社内だけで完結させず、“生成AI実践力”を育むための育成基盤を外部と共創する選択肢を持ちましょう。
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まとめ|「AI活用が進まない」のは“現場のせい”ではない
AI活用がうまく進まない企業には、いくつかの共通点があります。
- ツール導入の目的が不明確なまま現場に展開されている
- 一部の有志だけが使い、社内にノウハウが蓄積されない
- 学習機会が整備されず、育成が現場任せになっている
こうした課題の本質は、“リテラシー”が組織として育まれていないことにあります。
AIリテラシーとは、単なる操作スキルではなく、「何に、どう使うべきか」「どこまで信頼できるか」を判断する力です。
このリテラシーを“共通言語”として社内に定着させていくことが、AIを「一部の人が使うもの」から、「組織で成果を生む武器」へと変える第一歩です。
もしあなたの会社が、AI活用の足踏みに悩んでいるなら——まず取り組むべきは、「育成の設計」と「リテラシーの共通化」かもしれません。
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