Copilotを全社員に配った。
でも、誰も使わない。

Microsoft 365 Copilotのライセンスを全社員に付与した。導入説明会も開いた。社内ポータルにマニュアルも掲載した。

3ヶ月後、利用率を確認すると1割にも満たない。

これは珍しい失敗談ではありません。M365 Copilotを導入した企業の大半が直面する、構造的な問題です。

AI経営総合研究所はこの1年間で、Copilotの定着に成功した企業を数多く取材してきました。その中で見えてきたのは、「定着する企業」と「しない企業」の間にある、明確な違いです。

なぜ、Copilotは社内に定着しないのか

Copilotの社内活用が進まない原因は、ほぼ3つのパターンに集約されます。

ツールを配っただけで終わる

ライセンスを付与し、「使ってください」とアナウンスする。多くの企業がこのパターンです。

問題は、Copilotは「開けばすぐ使えるツール」ではないこと。何をどう指示すれば業務に使えるのか、社員にはわからない。結果として「試しに触ってみたけど、微妙だった」で終わる。

研修を1回やって満足する

導入時に全社研修を実施。参加率も高く、その場では盛り上がる。

しかし1週間後、日常業務に戻った社員はCopilotを開かなくなります。研修で学んだ内容と自分の業務がつながらない。1回の研修で定着するツールは、そもそも存在しません。

上司が使わない

テルモのCFO兼CIOは、こう指摘しています。

「上司が後ろ向きだと、部下は使えません。『AIを使うのは手抜きだ』という空気がある限り、現場での活用は進まない」

管理職層が使わないツールを、現場が使うわけがない。これは意識の問題ではなく、組織構造の問題です。

Copilotの定着に成功した8社は、何が違ったのか

AI経営総合研究所が直接取材した8社の事例を、4つのパターンに分類して紹介します。

パターンA トップダウン型 — 経営層が自ら使い、発信する
やったこと CEOが毎日Copilotを使い、その活用事例を社員に発信。全社員にライセンスを一斉付与し、「使うのが当たり前」の文化を作った。
成果 IT部門セミナーに毎回1,000人超が参加。全社で啓発→市民開発→外部連携の3段階で浸透。
ポイント 「AIを使うことは手抜きではない」というメッセージを、経営トップ自らが体現した。
テルモの取材記事を読む
やったこと 経営トップが「最大のリスクは変化しないこと」と明言。全社員にMicrosoft Copilotを付与し、現場主導の活用を促進。
成果 議事録作成が1時間→数分に短縮。開発部門で属人化していた知識がAIで開放され、新規用途のアイデアが生まれた。
ポイント トップのメッセージが「やらない理由」を潰した。
デクセリアルズの取材記事を読む
パターンB 仕組み化型 — 使い続ける仕掛けを組織に埋め込む
やったこと 社内報に漫画風のAIツール紹介記事を掲載。社内ポータルで事例やプロンプトを投稿でき、「いいね」ランキングで良質なナレッジが自然に集まる仕組みを構築。
成果 間接従業員2万人のうち、利用率70%超を達成。全3回の研修で半数以上が受講完了。
ポイント 「使わせる」のではなく、「使いたくなる」環境を設計した。
村田製作所の取材記事を読む
やったこと 「許可制」「教育」「サーベイ」の三層構造で定着を推進。AI技術推進部を設置し、相談窓口・教育・社外発信を一体運営。
成果 社内利用率87.1%を達成。生成AIテスト設計支援ツール「TestScape」を自社開発。
ポイント 利用状況をサーベイで定量把握し、施策をPDCAで回した。
バルテスの取材記事を読む
パターンC 現場浸透型 — 心理的ハードルを徹底的に下げる
やったこと 全国の拠点に足を運び、対面で勉強会を実施。「デジタル技術は他人事ではない」を直接伝えた。その後、オンライン学習で1万人が受講。
成果 毎日2,000人以上が社内AIツールを活用する状態に。2027年までに「DXという言葉をなくす」が目標。
ポイント オンラインだけでなく、対面で「空気を変える」ことから始めた。
花王の取材記事を読む
やったこと 「間違えるのは人もAIも同じ」という思想を社内に浸透させ、AIを使うことへの心理的ハードルを除去。現場主導の推進体制を構築。
成果 年間90万時間の業務削減を達成。バックオフィスからフロント業務への展開フェーズに移行。
ポイント 「完璧じゃなくていい」というメッセージが、現場の行動を変えた。
丸紅の取材記事を読む
パターンD 業務組込型 — 特定業務に深く組み込む
やったこと テストドライバーの感覚的な表現をデータ化する「匠AI」を数年かけて開発。熟練工の暗黙知を組織の資産に転換。
成果 次世代の育成スピードが大幅に向上。品質改善と生産性向上を同時に達成。
ポイント 全社一斉展開ではなく、「この業務にはAIしかない」という領域に集中投下した。
住友ゴムの取材記事を読む
やったこと 社内向け生成AI「AsahiAI Chat」、AI編集アシスタント「StoryHub」など、業務特化のツールを複数開発。セーフリスト制で承認済みツールのみ利用可能に。
成果 AIエバンジェリスト約90名を育成(目標50名の1.8倍)。社内公募で140件のAI活用提案。
ポイント 汎用ツールではなく、自社業務に最適化したツールを用意した。
朝日新聞社の取材記事を読む

定着する組織に共通する、3つの条件

8社の取材を通じて見えてきた共通点は、以下の3つです。

1

経営層が「使う側」にいる

定着に成功した企業の経営層は、AIを「導入を指示する対象」ではなく「自分が使うもの」として捉えていました。テルモのCEOは毎日使い、デクセリアルズのトップは「変化しないことが最大のリスク」と明言しています。

トップが使えば、管理職が使う。管理職が使えば、現場が使う。この連鎖が起きない限り、ツールは定着しません。

2

研修の「その後」を設計している

1回の研修で終わらせた企業はありませんでした。村田製作所はいいねランキングで継続的なナレッジ共有を促し、バルテスはサーベイで利用状況を定量把握してPDCAを回しています。花王は全国を対面で回った後、オンライン学習で1万人に展開しました。

「教える」で終わるのではなく、「使い続ける仕組み」を組織に埋め込んでいます。

3

心理的安全性を確保している

丸紅の「間違えるのは人もAIも同じ」、テルモの「AIは手抜きではない」。いずれも、AIを使うことへの後ろめたさや不安を、言葉で明確に否定しています。

ツールの機能ではなく、「使っていいんだ」という空気を作ることが、定着の最後のピースでした。

Copilotの活用を、次のステップへ

8社の事例に共通するのは、ツールを配っただけでは終わらなかったこと。定着には戦略があり、仕組みがあり、経営の意思がありました。

自社のCopilot活用を次のステップに進めるための資料を、無料で公開しています。

無料で資料をダウンロードする(3冊セット・計94頁) 自社のCopilot活用について相談する