ビジネスで成果を上げるために欠かせない「ロジカルシンキング」と「ラテラルシンキング」。この2つの思考法は、どちらも問題解決に活用されますが、そのアプローチは正反対です。
ロジカルシンキングは論理的に答えを導く垂直思考、ラテラルシンキングは既成概念を破る水平思考として知られています。
特にAI時代の今、生成AIでは代替できない人間ならではの思考力として、両方の使い分けが組織の競争力を左右します。
本記事では、2つの思考法の違いから実践的な活用方法、さらにAI時代に求められる新しい思考スキルまで、組織で成果を出すための具体的なアプローチを解説します。
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ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違いとは【基本理解編】
ロジカルシンキングとラテラルシンキングは、どちらも重要な思考法ですが、アプローチが根本的に異なります。
前者は論理を積み重ねて答えを導く垂直思考、後者は視点を変えて新しい発想を生む水平思考です。
ロジカルシンキングとは何か
ロジカルシンキングは、筋道立てて考える論理的思考法です。問題に対して体系的にアプローチし、根拠と結論を明確に関連付けて答えを導きます。
この思考法では、「なぜそうなるのか」という因果関係を重視します。データや事実をもとに、論理的な推論を重ねて一つの結論にたどり着くのが特徴です。
例えば売上が減少した際、過去のデータを分析し、競合状況や市場環境を検証して原因を特定します。このように段階的に分析を深めることで、確実性の高い解決策を見つけられます。
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ラテラルシンキングとは何か
ラテラルシンキングは、既成概念にとらわれない水平思考法です。従来の考え方から脱却し、多角的な視点で問題を捉え直して革新的なアイデアを生み出します。
1967年にエドワード・デボノ博士が提唱したこの思考法は、「ラテラル(側面)」という言葉通り、問題を横から眺めて新しい切り口を見つけることを重視します。
例えば「13個のオレンジを3人で分ける」という問題で、通常なら4個ずつ配って余りを3等分すると考えるでしょう。しかしラテラルシンキングでは「ジュースにして分ける」「種を植えて将来分ける」など、固定観念を破る発想が生まれます。
2つの思考法の本質的な違い
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの最大の違いは、問題へのアプローチ方向です。前者は深く掘り下げる垂直思考、後者は幅広く展開する水平思考といえます。
プロセスの違いも明確です。ロジカルシンキングは論理的な段階を踏んで答えに近づきますが、ラテラルシンキングは直感や飛躍を活用して新しい視点を獲得します。
到達する結論の性質も異なります。ロジカルシンキングでは論理的に正しい一つの答えを目指しますが、ラテラルシンキングでは複数の創造的なアイデアが生まれる可能性があります。
クリティカルシンキングを含むトリプルシンキング
現代のビジネスでは、ロジカル・ラテラル・クリティカルの3つの思考法を組み合わせる「トリプルシンキング」が重要です。それぞれが相互補完することで、より質の高い判断ができるようになります。
クリティカルシンキングは「批判的思考」とも呼ばれ、前提条件や既存の情報を疑って検証する思考法です。この3つを使い分けることで、論理的な分析力、創造的な発想力、批判的な検証力をバランスよく発揮できます。
AI時代においては、人間にしかできない高度な思考判断がより重要になっています。生成AIが論理的な処理は得意でも、創造的な発想や批判的な検証には限界があるためです。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングのメリットと活用場面
ロジカルシンキングとラテラルシンキングは、それぞれ異なるメリットを持ち、適用場面も大きく異なります。
論理的思考は確実性と説得力を、水平思考は革新性と創造性をもたらします。
ロジカルシンキングのメリット
ロジカルシンキングの最大のメリットは、誰もが納得できる説得力のある結論を導けることです。論理的な根拠に基づいた判断は、組織内での合意形成を円滑に進められます。
具体的なメリットは以下の通りです。
・問題の原因を体系的に分析できる:複雑な課題も要素分解して整理し、見落としなく対処法を検討可能
・意思決定の精度が向上する:データに基づいた客観的な判断により、感情に左右されない合理的な選択が実現
・チーム内コミュニケーションが明確になる:論理的な説明で相手の理解を促し、プロジェクトの方向性を統一
データドリブン経営においては、この論理的思考力が組織の競争力を決定づける重要な要素となっています。
ラテラルシンキングのメリット
ラテラルシンキングのメリットは、従来の枠を超えた革新的なアイデアを生み出せることです。既成概念にとらわれない発想により、競合他社との差別化や新しい価値創造が実現できます。
主なメリットは以下の4点です。
・行き詰まった問題に新しい突破口を開ける:従来の方法では解決できない課題も、視点変更で意外な解決策を発見
・イノベーションの創出につながる:異業界のアイデア組み合わせや常識への疑問により、画期的な商品・サービスが誕生
・組織の創造性を活性化できる:多様な視点からのアイデア出しで、チーム全体の発想力が向上
・問題解決のスピードが向上する:論理的分析に時間をかけず、直感的発想で早期解決策を発見
それぞれの思考法が最も効果的な場面
ロジカルシンキングは確実性が求められる場面で威力を発揮します。データ分析、予算計画、リスク管理、プロジェクト管理などの業務では必須の思考法です。
顧客への提案書作成や会議での報告においても、筋道立てた説明が重要になります。
ラテラルシンキングは創造性や革新性が必要な場面で最大の効果を発揮します。新商品開発、マーケティング戦略の立案、組織改革などが代表的な活用シーンです。
ブレインストーミングや企画会議では、参加者の固定観念を取り払い、自由な発想を促すためにラテラルシンキングが活用されます。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの鍛え方と実践方法
ロジカルシンキングとラテラルシンキングは、どちらも継続的な練習によって習得できるスキルです。
効果的なトレーニング方法を実践することで、組織全体の思考レベルを向上させられます。
ロジカルシンキングを鍛える方法
ロジカルシンキングの習得には、論理的なフレームワークを使った反復練習が最も効果的です。日常業務の中で意識的に論理的思考を実践することで、自然に身に付きます。
基本的なフレームワークとしてMECE(ミーシー)があります。これは「モレなくダブりなく」という意味で、情報を整理する際の基本原則です。
ロジックツリーも重要なツールです。問題を階層化して「なぜ?」を繰り返すことで、根本原因まで論理的に辿り着けます。
ラテラルシンキングを鍛える方法
ラテラルシンキングの向上には、既成概念を意識的に疑う習慣づけが重要です。日常的に「他の方法はないか?」と自問することで、発想の幅が広がります。
オズボーンのチェックリストは効果的なトレーニング手法です。転用・応用・変更・拡大・縮小・代用・逆転・結合の8つの視点から物事を見直すことで、新しいアイデアが生まれます。
6色シンキングハットも有効です。白(事実)・赤(感情)・黒(リスク)・黄(利益)・緑(創造)・青(管理)の6つの帽子を使い分けて議論することで、多角的な思考が促進されます。
AI時代にロジカルシンキングとラテラルシンキングが重要な理由
AI技術の急速な発達により、人間の思考力の価値がますます重要になっています。
生成AIでは代替できない思考領域で、ロジカルシンキングとラテラルシンキングの両方が必要不可欠な理由があります。
生成AIでは論理の検証ができないから
生成AIが出力した情報の真偽判断には、人間のロジカルシンキングが必須です。AIは大量のデータから情報を生成しますが、その正確性や論理的妥当性を検証する能力には限界があります。
生成AIの回答には事実誤認や論理的な矛盾が含まれる場合があります。これらの問題を見抜くには、人間による論理的な検証プロセスが不可欠です。
データの因果関係を正しく分析するのも人間の重要な役割です。AIは相関関係は見つけられますが、本当の因果関係を判断するには、論理的思考による深い洞察が必要になります。
生成AIには創造的な発想転換ができないから
既成概念を破る革新的なアイデアの創出は、現在のAI技術では困難です。生成AIは学習データの範囲内で情報を組み合わせることは得意ですが、根本的な発想転換は人間独自の能力といえます。
AIが生成するアイデアは、過去のパターンの組み合わせに留まりがちです。一方、ラテラルシンキングでは常識や前提を疑うことで、AIの予測範囲を超えた解決策を見つけられます。
特に新しい市場の創造や社会課題の解決においては、人間ならではの創造的な発想転換が競争優位の源泉となるでしょう。
AI活用の成果を最大化するために両方の思考法が必要だから
AIツールを効果的に使いこなすには、ロジカルシンキングとラテラルシンキングの両方が重要です。適切な指示(プロンプト)の設計から結果の評価まで、人間の思考力が成果を左右します。
論理的思考は、AIに対する指示を明確に構造化し、期待する結果を得るために必要です。一方、創造的思考は、AIの可能性を最大限に引き出す新しい活用法を見つけるのに役立ちます。
人間×AIのコラボレーションで競争優位を築くには、AIの得意分野と限界を理解し、人間の思考力で補完する戦略的なアプローチが求められるでしょう。
まとめ|ロジカルシンキングとラテラルシンキングで組織の思考力を変革しよう
ロジカルシンキングとラテラルシンキングは、AI時代の組織に欠かせない2つの思考法です。論理的思考で確実性と説得力を高め、水平思考で革新的なアイデアを創出することで、生成AIでは代替できない人間ならではの価値を発揮できます。
重要なのは、どちらか一方に偏るのではなく、場面に応じて使い分けることです。データ分析や意思決定にはロジカルシンキングを、新商品開発や課題解決の突破口にはラテラルシンキングを活用しましょう。
さらにクリティカルシンキングを加えたトリプルシンキングで、より質の高い判断が可能になります。
まずは日常業務でMECEやロジックツリーを意識し、定期的にブレインストーミングの機会を設けることから始めてみてください。
組織全体の思考レベルを体系的に向上させたい場合は、専門的な研修プログラムの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

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ロジカルシンキングとラテラルシンキングに関するよくある質問
- Qロジカルシンキングとラテラルシンキングはどちらが重要ですか?
- A
どちらも重要で、場面に応じて使い分けることが最も大切です。データ分析や意思決定にはロジカルシンキング、新商品開発や創造的な問題解決にはラテラルシンキングが効果的です。現代のビジネスでは両方の思考法を身につけることで、より質の高い判断ができるようになります。
- Q初心者はどちらの思考法から学ぶべきですか?
- A
ロジカルシンキングから始めることをおすすめします。論理的思考は日常業務での説明や報告に直接活用でき、習得効果を実感しやすいためです。MECEやロジックツリーなどの基本フレームワークを身につけた後に、ラテラルシンキングの創造的発想法に取り組むと効率的に学習できます。
- Q組織でこれらの思考法を導入する際の注意点はありますか?
- A
一過性の研修だけでは定着しないため、継続的な実践が重要です。日常業務に思考法を組み込む仕組み作りや、定期的なワークショップの開催が必要です。また、経営陣が率先して思考法を活用する姿勢を示すことで、組織全体への浸透が促進されます。
- QAI時代でも人間の思考法は本当に必要ですか?
- A
むしろAI時代だからこそ人間の思考力がより重要になります。生成AIの出力を論理的に検証し、AIでは生み出せない創造的なアイデアを発想する能力が競争優位の源泉となります。AIをツールとして効果的に活用するためにも、両方の思考法の習得が不可欠です。