ChatGPTやCopilotなどの生成AIを導入し、社内研修も実施済み。

一見、社内のAI活用が順調に進んでいるように見える企業でも──

「結局、使っているのは一部の社員だけ」
「研修のときは盛り上がったけど、実務では話題にも出ない」
「OJTでどう育成すればいいか分からない」

という声が後を絶ちません。

多くの企業が見落としているのが、「集合研修のあと、実務にどう定着させるか」という視点。

つまり、OJTの中でAI活用を“当たり前の習慣”として根づかせる設計が欠けているのです。

この記事では、AIを“使える力”として現場に定着させるためのOJT設計について、実践的なステップとチェックリストを交えながら解説します。

生成AIを「研修で終わらせない」ために、現場の育成をどう変えるべきか。

そのヒントを、あなたの会社のOJTに落とし込んでいきましょう。

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なぜAIは定着しない?研修→実務の“空白地帯”が生む3つのズレ

多くの企業で、「AI研修はやったが、現場ではほとんど使われていない」というギャップが生まれています。

その背景には、研修から実務への“つなぎ目”が設計されていない、いわば「空白地帯」の存在があります。

ここでは、AI活用が現場で定着しない理由として、特に多く見られる3つのズレを整理します。

① 研修と現場業務がつながっていない

研修で紹介されたAIツールの使い方が、現場で直面する業務とリンクしていないケースがよくあります。

「ChatGPTで文章を要約できる」「アイデアを出せる」といったスキルは学んだとしても、それをどの業務で、どのタイミングで使うのかが曖昧だと、結局“研修止まり”になってしまいます。

✅【ポイント】
「どの業務で使えばよいか」が明文化されていないと、活用は進まない。

② OJTを担う上司自身がAIに不慣れ

OJTにおいて、部下の育成を担うのは多くの場合その上司ですが、上司もAI活用に不安を抱えているというケースが少なくありません。

  • 「自分も使いこなせていないのに、教えるなんて無理」
  • 「失敗例を見せたら恥ずかしい」
  • 「使い方を聞かれても答えられないかも…」

こうした心理的ハードルが、現場でのAI定着を妨げています。

✅【ポイント】
「教える側のリテラシー支援」もOJT設計の一部と捉える必要があります。

③ 「間違えてはいけない」という空気が、AI活用を遠ざける

生成AIは万能ではなく、当然ながら誤りもあります。

しかし、AI活用に対する“完璧主義”が根強い現場では、ミスを恐れて使わなくなる傾向があります。

  • 「AIの回答が間違っていたらどうしよう」
  • 「使って失敗したら評価が下がるかも」
  • 「ツールに頼るのは“手を抜いている”と思われるのでは」

こうした空気感が、「まずは使ってみよう」という挑戦を阻みます。

✅【ポイント】
AI活用には“失敗しても大丈夫”な土壌づくりが必要です。

このようなズレを放置すると、せっかくの研修が無駄になってしまうだけでなく、「AIは現場では役に立たない」という誤解が定着してしまいます。

AIをOJTで“使える力”に変えるための4ステップ

研修で学んだ内容を、現場で「実際に使える力」に変えるためには、OJTにおける仕組み設計が必要不可欠です。

ここでは、AI活用を自然に業務へ定着させていくための4つの実践ステップをご紹介します。

① 「この業務で使う」を明確にする|トリガーを設計する

まずは、どの業務でAIを使うかを具体的に決めておくことが重要です。

OJTの中で「迷ったときはこの業務で試してみよう」という“トリガー”となる場面を設定しましょう。

  • 資料作成時のたたき台作成にChatGPTを使う
  • 社内共有文の要点整理にCopilotを使う
  • 顧客対応メールの文案ドラフトに生成AIを活用する

✅【ポイント】
「使うかどうかを都度考える」のではなく、「この業務では使う」と決め打ちにすることで、行動に落とし込みやすくなります。

② 上司や育成者が“一緒に使う”|見せて、話して、促す

「教える」よりも効果的なのが、「一緒に使ってみせる」ことです。

たとえば、1on1や打ち合わせの場で、育成者自身が実際にChatGPTを立ち上げてプロンプトを考える様子を見せることで、現場のAI活用は加速します。

  • 「こんな聞き方したら、精度が上がるんだね」
  • 「ちょっと試してみようか」
  • 「今のやり取り、プロンプトにして残しておこう」

このような言動が、部下にとって“使っていい空気”をつくります。

✅【ポイント】
完璧でなくてもいい。「使っている姿」を見せること自体が育成につながる

③ 小さな成功体験を積ませる|“使ってラクだった”を実感させる

AI活用が定着するかどうかは、「ラクになった」というポジティブな体験の蓄積にかかっています。

最初は、5分の時短や、資料の質が少し良くなったといった小さな成功で十分です。

  • 「前よりスムーズに書けた」
  • 「情報収集の時間が減った」
  • 「プロンプトの工夫で精度が上がった」

こうした体験を「たまたま」ではなく、意図して設計することが大切です。

✅【ポイント】
成果を実感させることが、継続的な活用につながります。

④ 活用を“共有資産”にする|プロンプト・Tipsの見える化

最後に、個人の学びや工夫を、チーム全体で共有する仕組みを整えましょう。

  • Slackに「プロンプト共有チャンネル」を設ける
  • 社内ポータルに「今週の活用Tips」を投稿
  • 小さな成功を朝会などで共有する時間をつくる

このように、活用のノウハウが自然と循環する文化を育てていくことが、OJTを通じたAI活用定着のカギです。

✅【ポイント】
「誰が使っているか分からない」状態をなくし、“みんなで育てるAI活用”にすることが理想です。

AI OJTを成功させるための実践チェックリスト

ここまでご紹介した4ステップを、自社のOJTに取り入れる準備ができているかどうか。

以下のチェックリストで、自社のOJTがAI活用に対応できる設計になっているかを確認してみましょう。

チェック項目状況
OJTの中で「AIを使う業務」が具体的に明示されている□できている
□一部できている
□できていない
上司や育成者がAIを使う様子を、実際に部下に見せている□できている
□一部できている
□できていない
AIを活用した結果、「作業時間短縮」や「資料の質向上」などの成功体験が部下に共有されている□できている
□一部できている
□できていない
Slackや社内ポータルなどに「プロンプト事例」や「活用Tips」を投稿・共有している□できている
□一部できている
□できていない

ひとつでも「できていない」があれば、OJTの設計を見直すチャンスです。

単発の研修だけでは、現場のAI活用は定着しません。

日常業務の中で、AIを“使って当たり前”の状態にするための育成設計が求められています。

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成功するOJT設計のポイント|よくある落とし穴を避けるには?

「AI活用をOJTに組み込む」と言っても、ただ現場に任せるだけでは定着は難しいのが実情です。

ここでは、AI OJT設計でよくある失敗と、それを避けるためのポイントを整理します。

✔ 「OJT任せ」で丸投げしない

よくある失敗は、「研修は終わったから、あとは現場でOJTでやってね」と丸投げしてしまうことです。

現場の上司が「何をどう教えたらいいのか分からない」まま進めると、結局誰も使わない状況に逆戻りします。

✅【対策】
OJTにも“設計”が必要。「誰が」「何を」「どう教えるか」の流れをガイドラインで明示する。

✔ 上司=教える人、の前提を疑う

AI活用に関しては、必ずしも上司が“先生”である必要はありません

むしろ、「部下と一緒に試す」「チームで探究する」ような共創型の学び方のほうが、組織としての定着力が高まります。

✅【対策】
「上司が詳しくなくても進められる」プロンプト例や活用パターンをテンプレ化して共有する。

✔ 成功体験は“見える化”して広げる

せっかくAIを使ってうまくいったとしても、それが共有されないと「活用ノウハウ」は個人の中に閉じてしまいます。

これでは組織に知見がたまりません。

✅【対策】
成果は「小さな成功」で十分。Slackや朝会で共有する習慣を仕掛けることが、心理的ハードルの解消にもつながります。

OJTの設計においては、“人材育成”と“仕組み設計”の両面が欠かせません。

属人的な指導ではなく、チームでAI活用を育てる文化を目指すことが、真の意味での「AI人材の定着」につながります。

OJTでのAI活用を支援する「外部パートナー」の使い方

AIをOJTに組み込もうとすると、「そもそも教えられる人がいない」という壁に直面する企業は少なくありません。

上司も初学者、現場は手一杯、情報システム部門は支援の限界…。そんな時にこそ検討すべきなのが、外部パートナーの活用です。

「使い方を教える研修」だけでは不十分

多くのAI研修が提供しているのは、あくまで「ツールの使い方」です。

しかし、OJTの中で求められるのはそれだけではありません。

  • 現場業務にどう組み込むかの設計支援
  • プロンプトや活用シーンのテンプレート化
  • 教える側・教わる側のリテラシーギャップを埋める支援

これらを“研修で終わらせず、継続的に伴走できるパートナー”かどうかが、外部サービス選定の分かれ目です。


SHIFT AIでは、OJTと連動した「定着支援型AI研修」を提供

SHIFT AIでは、以下のようなOJT現場への定着を前提とした研修プログラムを提供しています。

  • 各部門の業務内容に応じたAI活用パターンの提案
  • 上司・OJT指導者向けの「伝え方サポート」
  • 「この業務ではこのプロンプトを使う」という現場向けツールキットの提供
  • 活用度合いの可視化・フィードバック設計まで一括支援

OJTと連動するからこそ、“やって終わり”ではない研修が実現します。

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サービス紹介資料

FAQ|よくある質問

Q
上司がAIに詳しくなくても、OJTで教えられますか?
A

はい、教える側が“完璧である必要”はありません。

プロンプト例や活用シーンのテンプレートがあれば、「一緒に使ってみる」ことでOJTは機能します。むしろ、部下と一緒に試行錯誤するスタイルのほうが、現場には定着しやすい傾向があります。

Q
AIをOJTで使わせるには、どの業務から始めればよいですか?
A

成果が目に見える“定型業務”から始めるのがおすすめです。

たとえば、資料作成、社内報告文、議事録要約、FAQ作成など。初期段階では、業務の一部だけでもAIに任せることで、「使ったらラクになった」という実感を得やすくなります。

Q
少人数のチームでも、OJT型AI活用は可能ですか?
A

はい、むしろ少人数のほうが柔軟にスモールスタートしやすいです。

AI活用の範囲を限定し、1〜2人で試してから横展開する“PoC(実証導入)型”の進め方が効果的です。SHIFT AIの研修でも、このようなスモールスタート支援が可能です。

Q
そもそもOJTにAI活用を組み込むべき理由は?
A

単発の研修だけでは、現場でAIが“使われる状態”にはなりづらいからです。

OJTを通じて「実務でどのように使うか」を習慣化させることで、AI活用が一部の人だけのものにならず、組織としての定着が進みます。