人手不足や働き方改革の影響で、企業にはこれまで以上に生産性の向上が求められています。その中で注目を集めているのが、AIを活用した業務効率化です。定型業務の自動化だけでなく、データ分析や文書作成といった知的業務にもAIが活用されるようになり、多くの企業で成果が出始めています。
しかし、「どう活用すればよいか分からない」「社員が使いこなせるか不安」といった声も少なくありません。本記事では、企業がAIで業務効率化を進めるための具体的な方法や成功事例、そして定着化に欠かせないAI研修のポイントまでを詳しく解説します。
AI導入で失敗しないための視点を押さえ、実践的なヒントをお届けします。
なお、SHIFT AIでは、AI活用による業務効率化支援を行っています。AIの基礎知識や使い方のレクチャーを実施しており、無料相談も受け付けています。社員がAIを使いこなし、業務を進められるようになる第一歩を支援できます。
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AIによる業務効率化が求められる時代背景

労働人口の減少や競争環境の変化を背景に、生産性の向上と業務の見直しは企業にとって重要な経営課題となっています。
- 少子高齢化による人材不足と業務の集中
- 生産性向上が企業存続に直結している現実
- これまでの業務改善手法(属人的な工夫)には限界がある
ここでは上記3つの背景について、詳しく解説していきます。
少子高齢化による人材不足と業務の集中
まず考えられるのが、労働人口の減少をAIで補うニーズがあることです。
現在、日本は少子高齢化の進行により、国内全体で労働力人口が減少しています。その影響を受けて、AIなどのテクノロジーによる省力化・自動化の必要性が急速に高まっています。AIに業務を代替させる、もしくは補助的には使うなどして、少ない人員での業務を行う取り組みが進められているのです。
一部の企業では、十分な人員を確保できず、限られた従業員に業務が集中するケースが増加しています。業務負担の偏りはミスや離職のリスクを高め、生産性を大きく低下させる原因となることも少なくありません。
生産性向上が企業存続に直結している現実
より競争力を高めるためにAIを活用する企業も増えています。
グローバル競争や経済環境の変化、消費者ニーズの多様化が進むなか、企業はより競争力を高めることが求められています。そこでAIを使い、日々の業務の中にある無駄を省き、少ないリソースで高い成果を上げる仕組み作りが注目されているのです。
そこで、AIを使ってより効率よく業務を進め、より生産性を高めようとする企業はここ数年で増加しています。今後もAI技術の発展とともに、AIを取り入れる企業は増えていくでしょう。
これまでの業務改善手法(属人的な工夫)には限界がある
属人的な業務手法から脱却するために、AIを活用する企業もあります。
これまで一部の企業では、業務改善といえば「現場の工夫」や「ベテラン社員の経験」に頼る形が多く見られました。しかし、こうした手法は担当者によって成果に差が出やすく、再現性や継続性に乏しいという課題があります。加えて、属人化が進んでしまうと、担当者の異動や退職が業務の停滞を招くリスクも考えられるでしょう。
これからは、誰でも一定の品質で業務を遂行できるように仕組み化・標準化することが求められ、その鍵としてAI活用が注目されています。人に依存せず、プロセスに依存する仕組みづくりが組織の安定に直結します。
業務効率化にAIを活用するメリット

AIは、単なる自動化ツールではなく、企業全体の業務効率や品質向上を支える重要なツールです。
- 繰り返し作業の自動化で工数削減
- 作業のミス低減、正確性の向上
- 人手では難しい大量データ処理が可能に
- 業務標準化・ナレッジ共有が進むことで組織全体が強くなる
ここでは、業務効率化にAIを活用する4つのメリットについて、解説します。
繰り返し作業の自動化で工数削減
AIやRPA(自動化システムのこと)を活用することで、簡単な業務をを正確かつ高速に処理できるようになり、大幅な工数削減が可能です。請求処理やデータ入力など、単純な作業はAIである程度代替できます。より短時間で業務が終えられるようになるでしょう。
また、業務の自動化により、社員はアイディアの創出や顧客への営業など、創造性や判断力を必要とする業務に専念できるようになります。限られたリソースをより戦略的に活用でき、生産性の向上と業務の質の両立が実現されるでしょう。AIの導入は、業務時間の短縮だけではなく、人材活用の最適化にもつながる取り組みです。
作業のミス低減、正確性の向上
業務をより正確に行ううえでも、AIは活躍します。
人が行う業務には、入力ミスや確認漏れなどのヒューマンエラーがつきまといます。特に、繰り返し作業や煩雑な業務では、ミスが発生することも少なくありません。AIを活用すれば、ルールに従った正確な処理が可能となり、業務品質の安定につながります。
たとえば、顧客情報の入力や数値チェックをAIに任せることで、手動作業に伴うリスクを大幅に軽減できるでしょう。また、AIは処理履歴を記録することができ、トレーサビリティの確保にも寄与します。精度の高い業務運用は、顧客満足度の向上や社内の信頼性強化にもつながる重要な要素です。
人手では難しい大量データ処理が可能に
データ分析にもAIは有用です。
現代のビジネスでは、日々膨大な量のデータが生成・蓄積されており、これを有効活用することが競争力の源泉となっています。しかし、これらのデータを人の手で分析するには膨大な時間と労力がかかり、現実的ではありません。AIは、大量データの中から瞬時にパターンや傾向を抽出し、意思決定に役立つ情報を可視化します。
たとえば、売上データから購買傾向を分析したり、顧客対応のログから満足度を測定することが可能です。人では追いつかない情報処理をAIが担うことで、より正確で迅速な経営判断が実現できるようになります。今まで気付かなかった顧客の傾向や需要を発見できる可能性もあるでしょう。
業務標準化・ナレッジ共有が進むことで組織全体が強くなる
AIによって社内でのスキルの所有が進むこともメリットです。AIを活用することで、業務手順や判断基準を仕組み化し、誰でも同じように対応できる体制を構築できます。たとえば、ベテラン社員の技術をAIに分析させれば、手法や業務手順などをマニュアル化すれば、ナレッジが組織全体に共有されるようになります。
これにより、経験の浅い社員でも一定水準の成果が出せるようになり、組織の底力が高まるでしょう。業務がベテラン社員や一部の従業員に属人化し、引き継ぎや再現性が低くなることを防ぎやすくなります。
AI導入は、単なる作業の効率化にとどまらず、「強い組織」づくりに貢献します。
AIで業務効率化を実現した企業事例

近年、多くの企業がAIを活用して業務効率化を図っています。
- 日立製作所|会議議事録の自動生成で業務時間を削減
- 大和ハウス工業|社内問い合わせをAIチャットボットで対応
- りそな銀行|事務処理のRPA・AI化で年間41万時間を削減
- 野村證券|営業資料作成を生成AIで効率化
- パナソニック コネクト|工場内の異常検知をAIで自動化
ここでは、代表的な事例を5つ紹介します。
日立製作所|会議議事録の自動生成で業務時間を削減
日立製作所では、音声認識と自然言語処理を組み合わせたAI技術を活用し、会議の議事録を自動生成するシステムを導入しました。これにより、従来手作業で行っていた議事録作成の時間を大幅に短縮し、記録の精度も向上させることに成功しました。
自動生成された議事録は、事後の確認や共有が迅速に行えるだけでなく、聞き漏らしや要点の抜けも減少したようです。発言者ごとの記録や重要キーワードの抽出も自動で対応できるため、議事録の質そのものが向上しています。また、過去の議事録データをAIが学習することで、要約精度の向上やテンプレートの最適化も進められています。
この仕組みにより、管理部門の業務負荷が軽減されただけでなく、会議に参加していない社員への情報共有もスムーズに行えるようになりました。
出典:経済産業省 第13回デジタル時代の人材政策に関する検討会「生成AI時代のDX推進」
大和ハウス工業|社内問い合わせをAIチャットボットで対応
大和ハウス工業は、Microsoft Teams上で利用可能なAIチャットボットを導入し、人事・総務への問い合わせ対応を効率化しました。社内マニュアルを基に約350件のFAQを作成し、社員からのよくある質問に24時間対応可能となり、担当部門の負担軽減と対応スピード向上を実現しています。
従来は、繁忙期になると対応が遅れることもあり、社員からの不満や対応ミスにつながるリスクがありました。AIチャットボットの導入によって、即時かつ一貫した回答が可能になり、社内全体の業務効率が改善されました。
さらに、チャットボットの応答ログを分析することで、社員のニーズや社内制度に対する理解度の把握も可能となり、制度改善や教育内容の見直しにもつながっています。業務の一部をAIに任せることで、ヒューマンリソースの戦略的な再配置も可能となりました。
出典:大和ハウス、Teamsから利用できるAIヘルプデスク/チャットボットを運用
りそな銀行|事務処理のRPA・AI化で年間41万時間を削減
りそな銀行は、定型業務の自動化にRPAとAI-OCRを活用し、口座開設や本人確認書類の処理にかかる時間を短縮しました。これにより、年間で約41万時間分の業務効率化に成功しています。
AI-OCRは紙や画像の文字をデータ化する技術です。手書きの文字や複雑なフォーマットにも対応できるため、これまで目視確認が必要だった業務を正確にデジタル処理できるようになりました。また、RPAによってデータ転記やファイル分類といった煩雑な作業を自動化し、業務の標準化と属人化の解消を同時に実現しています。
さらに、行内の他部門にも展開可能な汎用的な仕組みとして設計されており、各部署が自律的に業務改善に取り組む文化の醸成にもつながっています。AIとRPAを併用することで、人的リソースの最適配置と顧客サービスの質の向上の両立が可能です。
出典:20万円で社員1人分の活躍、りそなHDが導入したアーム型「中継ぎロボ」の実力
野村證券|営業資料作成を生成AIで効率化
野村證券では、営業担当者が作成していたプレゼン資料や提案書の作成業務に生成AIを導入し、効率化を実現しました。フォーマットや文案の生成が自動化され、準備時間が半分以下になったのです。
また、新人や若手社員にとっては、過去資料の検索や内容構成の参考になるテンプレートをAIが提示してくれるため、資料作成のスキル向上にも寄与しています。
AIの導入によって資料作成の属人化が解消され、一定のクオリティとスピードが担保される体制が整いつつあるようです。営業チーム全体の生産性が高まり、提案活動の質・量の両面において大きな成果が見られています。
出典:野村證券、データ分析用AIで大量の業務データ処理とシステムテストを効率化
パナソニック コネクト|工場内の異常検知をAIで自動化
パナソニック コネクトでは、製造現場にAI画像認識技術を導入し、異常の早期発見と原因特定を実現しました。
導入されたAIは、設備の稼働状況や作業者の動きなど、複数の映像データをリアルタイムで分析し、異常やリスクの兆候を自動的に検出します。これにより、作業中の事故リスクや品質不良の発生を未然に防ぐことができるようになったのです。
また、収集されたデータを蓄積・分析することで、異常発生のパターンや傾向を可視化し、将来的なトラブルの予兆検知にも活用されています。これまで感覚や経験に頼っていた現場判断が、AIによるデータベース型の運用に変わりつつあり、生産性と安全性の両面で高い効果を発揮しています。
企業でのAI活用の主な方法とツール

AIは業務の自動化や意思決定の高度化に役立つツールとして、多様な分野で導入が進んでいます。
- 定型業務
- 非定型業務
- 分析業務
ここでは上記3つの業務についてそれぞれよく使用されるツールについて触れていきます。
定型業務
まず、AIがよく活用されるのが、同じ動きをする業務です。決まった内容の書類作成やデータ入力などが該当します。
定型業務の効率化にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が用いられることが多いです。RPAは、あらかじめルール化された業務をソフトウェアで自動実行する仕組みです。例えば、請求書の発行、在庫確認、社内システムへのデータ入力などを自動化できます。RPAを使うことで、、従来手作業で行っていたルーチンワークを大幅に効率化します。
また、OCR(光学文字認識)もよく用いられる技術です。OCRは、紙の書類やPDFから文字情報を読み取ってデジタルデータ化する技術で、手書きの帳票や請求書の処理に有効です。RPAと組み合わせることで、紙ベースの業務も自動化でき、属人化の解消や入力ミスの削減につながります。
非定型業務
ChatGPTに代表される生成AIは、非定型業務への活用で注目を集めています。主な用途としては、議事録や報告書の作成、社内通知文の生成、メール文案の自動作成などがあります。
これまで担当者の経験や文章力に頼っていた業務を、AIが支援・代替することで、スピードと品質の両立が可能です。また、アイデア出しや構成整理といった思考作業も補助できるため、クリエイティブな業務の効率化に大きく貢献します。汎用性が高く、導入のハードルも低いため、企業規模を問わず活用が進んでいます。
分析業務
AIは、過去の実績データや外部情報をもとに、売上予測や需要予測、顧客分析などを高精度で行うことができます。これにより、経験や勘に頼っていた意思決定から脱却し、データドリブンな経営が可能です。
たとえば、小売業では購買履歴や天候情報をもとに商品の発注数を最適化したり、BtoB企業では営業活動の優先順位をAIが示すといった活用例があります。AIの予測結果をもとに業務方針を調整することで、無駄の削減や機会損失の防止が実現します。より戦略的で合理的な経営判断が可能となる点が大きなメリットです。
AI導入の課題と乗り越え方

AI導入は多くの企業にとって差し迫ったテーマですが、スムーズな活用には以下のような壁があります。
- 社内にAI人材がいない
- ツールは導入したが使われない
- 社員のリテラシー差が激しい
人材不足、活用定着の難しさ、リテラシー格差といった課題を把握し、適切な施策で乗り越えることが成功の鍵となります。
社内にAI人材がいない
AIを導入したいと考えても、社内に専門知識を持つ人材がいないためにプロジェクトが進まないという課題は多くの企業で見られます。AI技術は日々進化しており、外部ベンダーにすべてを依存すると、社内にノウハウが蓄積されず、長期的な活用が困難になります。
このような状況を打開するためには、社内でAIに関する基本的な知識を持つ人材を育成する取り組みが重要です。外部の研修や専門機関との連携を通じて、段階的にAI人材を育てることで、内製化と継続的な改善が可能になります。
ツールは導入したが使われない
AIツールを導入しても、現場で活用されずに形骸化してしまうケースは少なくありません。その原因の多くは、業務との乖離や、活用目的が不明確であることにあります。「何のために導入されたのか」「どのように使えばよいのか」が現場に伝わっていなければ、活用は定着しません。
導入段階から現場の業務フローに即した設計を行い、実際の使い方を具体的に示すことが重要です。また、定着に向けたフォローや、業務に即したトレーニングも併せて行うことで、活用率を高めることができます。
社員のリテラシー差が激しい
企業内では、部門や職種、世代によってAIに対する理解や受け入れ姿勢にばらつきがあります。特に、ベテラン層と若手社員の間でデジタルツールへの親和性に差があることも多く、これがAI活用を阻む一因となっています。
このリテラシーの差を埋めるためには、全社的なAIリテラシー向上を目的とした教育・研修が有効です。役職や職種を問わず、全社員がAIの基本概念や業務での活用例を理解することで、共通の土台が形成され、社内全体でAIを活かす環境が整います。
AI経営で業務効率化をするポイント

AIを活用した業務効率化を成功させるには、単なるツール導入にとどまらず、経営視点からの計画と現場レベルでの実行が求められます。ここでは、AI経営で業務効率化をするポイントを3つ紹介します。
- 経営課題と業務フローの棚卸しから始める
- 全社的なリテラシー向上と現場の巻き込み
- スモールスタートと段階的な拡張で成功体験を重ねる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経営課題と業務フローの棚卸しから始める
AIを導入する前提として、まずは自社の経営課題と業務フローを正確に把握することが重要です。どの業務が非効率で、どの部分に課題が潜んでいるのかを明確にすることで、AIの効果を最大化できる領域を見極めることができます。
現場任せにせず、経営層主導で「全体最適」の視点から業務の棚卸しを行うことで、ツール導入にとどまらない抜本的な改革が可能です。課題を可視化したうえで優先順位をつけ、段階的な導入計画を立てることで、効果的なAI活用につながります。
全社的なリテラシー向上と現場の巻き込み
AI導入の成功には、経営層だけでなく現場社員を巻き込むことが欠かせません。AIの目的や効果を全社員が理解していないと、活用が定着せず、形骸化するリスクが高まります。
特に、現場で業務を担う社員の協力なしには、実務レベルでの運用は成立しません。導入初期から現場の声を反映し、課題感や期待値を共有することで、現場主導の改善が可能になります。あわせて全社的にAIリテラシーを高めることで、活用が横展開しやすくなり、継続的な業務効率化の土台が整います。
スモールスタートと段階的な拡張で成功体験を重ねる
AI活用は、最初から全社導入を目指すのではなく、小規模な範囲から始める「スモールスタート」が有効です。まずは効果が出やすい業務や部門に絞って導入し、成果を可視化・共有することで、他部署への展開がスムーズになります。
早期に成功体験を積むことで、社内のAIへの理解と期待も高まり、推進力が生まれます。また、業務特性に応じて段階的に拡張することで、過剰な負担や失敗リスクを抑えながら定着を図ることができるでしょう。計画的な拡張戦略が全社的な変革を実現します。
自信が生まれれば、継続的にAIを使いこなすモチベーションにもつながります。習った知識をすぐに業務で活かせる環境が、自発的な活用を促す土台となります。
まとめ:AIを活用した業務効率化
AIを活用した業務効率化は、単なるツール導入にとどまらず、経営戦略と人材育成の両輪があってこそ成果につながります。自社の課題を見極め、社員がAIを正しく使いこなす体制を整えることが重要です。まずは一歩踏み出すことが、将来の大きな差となります。
SHIFT AIでは、企業の業務効率化のためのAI研修を行っています。AIの基礎知識や使い方をレクチャーします。また、AI導入に関して、自社に合う導入方法やどのツールを導入するかなど、幅広い内容を相談可能です。
AIで業務効率化を進めたい方はぜひご相談ください。
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