AI技術の活用が企業競争力を左右する現代において、「導入したいが費用がわからない」という悩みを抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか。

AI導入費用は数百万円から数千万円と幅広く、プロジェクトの規模や目的によって大きく変動します。本記事では、AI導入を検討している企業の担当者の方に、費用の全体像から具体的な相場、コスト削減方法までをわかりやすく解説していきます。

なおSHIFT AIでは、企業ごとの課題や予算に応じて「どこにどれだけ費用がかかるのか」「どの導入パターンが最適か」を専門のコンサルタントに相談可能です。SHIFT AIについて詳しく知りたい方は、下記のリンクからご確認ください。

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目次

AI導入費用とは?基本知識と相場

AIの導入は、企画から開発、運用までの全プロセスで費用が発生します。

費用は一般的に数百万円から数千万円の範囲に分布しており、企業規模やプロジェクトの複雑さによって大きく変動します。適切な予算を策定するために重要になるのが、TOC(総所有コスト)という考え方です。TCOには、初期投資だけでなく、運用保守費用やデータ更新費用なども含まれます。

ここでは、AI導入費用のTOCとその内訳、そしてプロセス段階における費用を見ていきましょう。

AI導入費用のTOCとその内訳

AI導入費用は大きく「初期費用」と「運用費用」に分けられます。

初期費用には、企画・要件定義といった上流工程の人件費、AIモデル開発費、システム連携費用などが含まれます。特にデータ関連費用(収集・クレンジング・アノテーション)は全体の30%以上を占めながらも、見落とされがちになるため注意が必要です。

運用費用にはシステム保守費、クラウド利用料、モデル更新費用などが含まれ、長期的な視点で予算化する必要があります。継続的なAI活用を実現するためには、最低でも月額10万円程度の運用費用を見込んでおきましょう。

AI導入のおもなプロセスと各段階の費用

AI導入プロジェクトは複数の段階に分かれており、各段階で異なる費用が発生します。

段階費用相場期間目安
ヒアリング・構想策定50万円~200万円1~2ヶ月
要件定義50万円~300万円1~2ヶ月
AI化可能性チェック・PoC40万円~500万円2~3ヶ月
データ収集・前処理・アノテーション100万円~2,000万円以上2~6ヶ月
AIモデル開発・トレーニング200万円~1,500万円以上3~6ヶ月
システム開発・統合500万円~3,000万円以上3~8ヶ月
運用・保守月額10万円~100万円継続

※費用相場、期間目安はプロジェクトの規模により異なります。

企業課題の分析とAI化の可能性を検討するヒアリング・構想策定フェーズでは50万円〜200万円程度。データ準備作業は100万円〜2,000万円以上と幅広く、データ量や質によって大きく変動します。モデル開発から既存システムとの連携まで含めると、初期費用全体で数百万円から数千万円の予算が必要です。

AI導入費用の相場は?プロジェクト規模別の目安

AI導入費用はプロジェクトの規模によって大きく異なります。自社の状況やニーズに合わせた適切な規模感を把握することで、現実的な予算計画を立てられます。

ここでは、小規模から大規模までのプロジェクトのそれぞれの特徴と相場を見ていきましょう。

小規模プロジェクト(数百万円規模)の費用内訳

小規模AIプロジェクトは、限定された業務領域や単一の機能に特化したシステムです。例えば、問い合わせ対応のための簡易チャットボットや、特定の画像パターンを検出する画像認識システムなどが小規模プロジェクトに該当します。

項目費用目安
企画・要件定義50万円~100万円
開発費200万円~300万円
導入・テスト30万円~50万円
初期費用合計280万円~450万円
運用費(月額)5万円~10万円

小規模プロジェクトの最大のメリットは、少ない投資費用でAI導入の効果を検証できる点にあります。AI成熟度が低い段階の企業では、小規模プロジェクトから導入を始めリスクを最小限に抑えるのがおすすめです。

中規模プロジェクト(1,000万円前後)の費用内訳

中規模プロジェクトでは、複数の機能を持つAIシステムや、より高度な精度を求めるシステムの開発が可能です。例えば、高度な対話能力を持つカスタマイズされたチャットボットや、多様な商品に対応した需要予測AIなどが中規模プロジェクトに該当します。

項目費用目安
企画・要件定義100万円~250万円
データ準備200万円~400万円
AIモデル開発300万円~500万円
システム連携200万円~300万円
導入・テスト100万円~150万円
初期費用合計900万円~1,600万円
運用費(月額)10万円~30万円

中規模プロジェクトは、本格的なAI活用と投資リスクのバランスが取れているため、多くの企業に選ばれています。

大規模プロジェクト(数千万円以上)の費用内訳

複数の事業部門にまたがる全社的な取り組みや、膨大なデータを扱う高精度な予測モデルの開発などが大規模プロジェクトに該当します。

項目費用目安
要件定義300万円~500万円
データ準備1,000万円~3,000万円
AIモデル開発1,500万円~3,000万円
システム連携1,000万円~2,000万円
導入・教育500万円~1,000万円
初期費用合計4,300万円~9,500万円
運用費(月額)50万円~100万円

大規模プロジェクトの成功には、経営層のコミットメントや専門人材の確保、綿密なプロジェクト管理が必要。そのため、開発期間も1〜2年と長期になる傾向です。

AI種類別の導入費用相場を比較

AIにはさまざまな種類があり、タイプによって導入費用は大きく異なります。企業のニーズに合った最適なAI種類を選択するためには、それぞれの特徴と費用相場を理解しておかなければなりません。

ここでは、AIの種類別に導入費用の相場を見ていきしょう。

チャットボット導入の費用相場

チャットボットはAIの中でも比較的導入しやすく、顧客対応や社内問い合わせの効率化に効果を発揮します。導入形態は大きく分けて次の2種類です。

導入形態初期費用月額費用おもな費用変動要因
SaaS型0~50万円5万円~100万円対応言語数、連携システム数、同時接続数
新規開発50万円~500万円10万円~30万円対応の難易度、知識ベース量、カスタマイズ度

SaaS型は初期費用が抑えられる反面、月額利用料が発生します。また、対応言語や連携システムの数により費用が増加する傾向です。

画像認識AI導入の費用相場

画像認識AIは、製造業における検品工程の自動化や小売業の在庫管理など、幅広い分野で活用されています。

種類費用相場備考
ソフトウェア単体20万円~80万円APIやライセンス費用のみ
システム全体50万円~数千万円ハードウェア含む
アノテーション費用1件あたり約100円専門知識が必要な場合は200~300円
追加学習・調整数十万円~200万円精度向上のための追加コスト

画像認識系のAIは、通常、学習用データのアノテーション(ラベル付け)作業が必要です。1件あたり約100円から数百円のコストがかかるため、1万枚の画像データでも100万円以上の費用が発生します。

音声認識AI導入の費用相場

音声認識AIはコールセンター業務の効率化や議事録の自動作成など、音声データを扱う業務の自動化に有効です。

規模初期費用月額費用おもな用途
小規模システム100万円~300万円5万円~20万円議事録作成、簡易音声応答
中規模システム300万円~800万円20万円~50万円コールセンター支援、音声検索
大規模・高精度システム1,000万円以上50万円以上多言語対応、専門用語対応

費用を左右する要因にはさまざまなものがあります。専門用語への対応や騒音環境下での認識精度向上もそのひとつ。また、クラウドAPIを利用する方式とオンプレミス(サーバーやソフトウェアなどのITインフラを自社で保有・構築・管理し、運用する形態)で構築する方式では費用構造が大きく異なります

例えば、音声認識APIでは1時間あたり1,000円〜5,000円程度の従量課金が一般的です。月間50時間の利用であれば5万円〜25万円のコストですが、月間500時間になると50万円〜250万円に膨らみます。

オンプレミス方式は初期費用が高い反面、利用量が増えても月額コストは大きく変動しません。そのため、長期的・大規模利用ではコスト効率が向上します。

需要予測AI導入の費用相場

需要予測AIは小売業や製造業において、在庫最適化や生産計画の効率化に大きな効果を発揮します。

導入形態初期費用月額費用予測粒度
SaaS型(基本)30万円~50万円20万円~40万円日次・週次予測
SaaS型(高度)50万円~100万円40万円~100万円時間帯別・SKU別予測
新規開発(基本)300万円~500万円10万円~20万円カスタム予測モデル
新規開発(高度)500万円~800万円20万円~40万円複合要因モデル、高精度予測

予測精度と費用には相関関係があり、当然ながら高精度を求めるほど費用は増加傾向です。例えば、需要予測AIの導入により、イトーヨーカドーでは発注業務の効率化を実現しています。

生成AI導入の費用相場

ChatGPTでよく知られる生成AIは、文章作成や画像生成、コード生成など、さまざまな用途で活用されています。

種類初期費用月額費用特徴
汎用生成AIシステム100万円~300万円10万円~50万円一般的な文章生成、社内QA
RAGシステム(基本)300万円~800万円20万円~70万円自社データ連携、社内知識活用
RAGシステム(高度)800万円~3,000万円30万円~100万円大規模データ連携、複数システム統合
API利用料数万円~数十万円利用量に応じた従量課金
ファインチューニング300万円~1,000万円自社データでのモデル調整

費用を左右するおもな要因は、API利用料と自社データ連携の複雑さです。セキュリティ要件が厳しい場合は、オンプレミス環境での構築や独自モデルの開発が必要となり、費用は大幅に増加します。

SaaS型AIとカスタム開発の費用比較

AI導入における重要ポイントは「既存のSaaSを利用するか」「カスタム開発を行うか」です。それぞれのアプローチにはメリット・デメリットがあり、費用面でも大きな違いがあります。

ここでは、SaaS型とカスタム開発の費用事例を見てみましょう。

SaaS型AI導入の費用事例

SaaS型AIは、専門的な開発知識がなくても比較的短期間で導入できるのが利点のひとつです。以下にAI種類別の導入費用事例をまとめました。

AI種類初期費用月額費用導入期間
チャットボット30万円~50万円10万円~20万円2週間~1ヶ月
画像認識50万円~80万円15万円~30万円1~2ヶ月
音声認識20万円~50万円10万円~30万円1~2ヶ月
需要予測30万円~100万円20万円~50万円1~3ヶ月
テキスト分析20万円~50万円10万円~30万円1~2ヶ月

SaaS型の導入は、一般的には約2週間〜1ヶ月で本格運用を開始できます。迅速な効果測定が可能になるため、AIの有効性をすぐに確認できるのが特徴です。一方、カスタマイズの自由度には限界があり、自社の特殊なニーズに対応できないケースもあります。

カスタム開発の費用事例

カスタム開発は、自社の業務やニーズに合わせたAIシステムを構築します。以下に実際のカスタム開発の費用事例をまとめました。

プロジェクト事例初期費用開発期間ROI
中小製造業の不良品検出2,000万円8ヶ月3年で約1億円のコスト削減
小売業の需要予測1,500万円10ヶ月年間3,000万円の効果
金融機関の顧客行動分析8,000万円18ヶ月年間3億円の売上増加
メルカリのAI出品機能約1億円1年以上非公開
Netflixのレコメンデーション約5億円2年以上年間10億ドル以上の効果

データやモデルの所有権確保による長期的な価値を作り出せるのが、カスタム開発の最大のメリットです。自社データの蓄積が進むにつれて精度が向上し、競争優位性が高まる点も大きいといえるでしょう。

一方で、開発リスクや予算超過リスクが高く、専門的な知識を持つ人材確保が課題です。

どちらを選ぶべき?選定ポイントを紹介

SaaS型とカスタム開発のどちらを選ぶかは、企業の状況や目的によって異なります。以下に選定のポイントをまとめました。

選定基準SaaS型が適している状況カスタム開発が適している状況
予算規模限定的な予算(数十~数百万円)十分な予算(1,000万円以上)
投資回収期間短期的ROI重視(半年~1年)長期的競争優位性重視(2年以上)
技術的成熟度AI人材・知見が乏しい社内にAI人材がいる/確保できる
業務の特殊性標準的な業務プロセス独自のノウハウ・特殊な業務フロー
データの機密性低~中程度の機密性高い機密性・セキュリティ要件
時間的制約迅速な導入が必要開発期間に余裕がある

多くの企業では、まずSaaS型を活用して効果検証を行い、必要に応じてカスタム開発に移行するハイブリッドアプローチを採用しています。

例えば小売業の事例では、SaaS型の需要予測AIを6ヶ月間実施。その効果を確認後にカスタム開発に移行し、自社独自のアルゴリズムを構築することで競合との差別化を実現しました。

AI導入費用を左右するおもな要因

AI導入による主な費用の要因は次の4つです。

  • プロジェクト規模と複雑性
  • データ準備
  • 開発体制
  • 技術選択

これらの要素を理解することで、より精度の高い予算計画を立てられます。

プロジェクト規模と複雑性による費用

AIプロジェクトの規模と複雑性は、費用を左右する大きな要因のひとつです。AI機能の数が増えるほど開発コストは比例的に増加していきます。

例えば、単一機能のチャットボットは数百万円で開発可能ですが、複数機能を持つ高度なアシスタントAIでは1,000万円を超えることも珍しくありません。

また、既存システムとの連携数も重要な要素です。基幹システム、CRM、社内ナレッジベースなど、連携するシステムが増えるほど開発工数とテスト工数が増加します。特に古いシステムとの連携はAPI対応が不十分なケースも多く、追加の開発コストが発生しやすいです。

ビジネスロジックの複雑さも費用に直結します。単純な判定ロジックだけでなく、複雑な条件分岐や例外処理が多いAIほど、開発・テストの工数が増加し、費用に大きな影響を与えるのです。

データ準備による費用

AI開発では、データ準備にかかるコストが全体の30〜50%を占めることも珍しくありません。見積もり段階で見落とされがちな項目でもあるので、注意が必要です。以下にデータ準備コストの内訳を示します。

データ準備項目費用目安影響要因
データ収集50万円~500万円データの希少性、専門性、量
データクレンジング100万円~300万円データの品質、形式の統一性
アノテーション(一般)1件あたり10円~100円作業の複雑さ、必要精度
アノテーション(専門)1件あたり100円~300円専門知識の必要性
前処理・特徴量抽出100万円~300万円データ構造の複雑さ
データ拡張50万円~200万円必要なデータ量、多様性

アノテーション(ラベリング)作業も大きなコスト要因です。画像のセグメンテーションでは1件あたり約100円、医療画像のような専門知識が必要な場合は1件300円以上のコストがかかります。1万枚の画像を準備する場合は、100万円〜300万円の費用が発生する計算です。

データ品質が低い場合、追加のデータ収集や前処理が必要となるため、予定外のコストリスクも考慮しなければなりません。データ準備の費用は過小評価されがちですが、AI開発の成否を決める重要な投資と捉えておきましょう。

開発体制による費用

費用面に大きな影響を与えるのが、「AI開発をどのような体制で実施するのか」です。おもに内製・外注・オフショアの3つのアプローチがあり、それぞれ人件費に大きな違いがあります。

開発体制人月単価目安メリットデメリット
内製開発データサイエンティスト:100万円~200万円
エンジニア:80万円~150万円
技術ノウハウの蓄積
迅速な改善サイクル
人材確保が困難
固定費増加
国内外注100万円~150万円専門知識の活用
品質の安定性
コスト高
仕様伝達コスト
オフショア30万円~60万円コスト削減
リソースの柔軟性
コミュニケーションコスト
品質リスク
ハイブリッド60万円~100万円コストと品質のバランス
段階的な内製化
体制管理の複雑さ

例えば、短いサイクルで反復的に開発を進める開発方法(アジャイル開発)と、上流工程から下流工程へ開発を進めていく方法(ウォーターフォール型開発)では、同じ機能を実装する工数が20~30%異なることも。

自社にAI人材がいない場合は、まず外部パートナーと協業しながら内製化を進めるハイブリッド体制も有効な選択肢のひとつです。

技術選択による費用

AI開発において、技術選択は費用面で大きな影響を与えます。以下にオープンソースと商用ツールの比較、クラウドAPIとオンプレミスの比較をまとめました。

技術選択初期費用運用費用適している状況
オープンソース(TensorFlow, PyTorch)低い中~高(人件費)技術力がある
カスタマイズ重視
商用ツール(AzureML, SageMaker)高い中程度短期導入重視
保守性重視
クラウドAPI非常に低い高い(従量課金)少量・不定期利用
初期投資抑制
オンプレミス非常に高い低い(大規模利用時)大量・定常的利用
セキュリティ要件高

クラウドAPIとオンプレミス構築の選択も長期的なコスト差を生み出します。例えば、クラウドAPIは初期投資を抑えられますが、利用量に伴う費用増加の懸念があります。

技術選定時には、ライセンス費用、導入支援、トレーニング、アップデート対応など、隠れたコスト要因も考慮しましょう。

AI導入費用を抑える方法

AI導入には相応の投資が必要ですが、適切なアプローチを取ることでコストを大幅に削減できる可能性があります。

ここでは、企業の規模や予算に合わせた効率的なAI導入への具体的な方法を見ていきましょう。

段階的な導入でアプローチする

AI導入では、「一気に完璧なシステムを構築する」よりも「小さく始めて徐々に拡大する」スモールスタートによるアプローチが効果的です。以下に段階的な導入アプローチの例を示します。

段階取り組み内容費用目安期間
1.課題特定と効果予測業務分析、AI適用可能性検討50万円~100万円1~2ヶ月
2.小規模PoC限定機能での効果検証100万円~200万円2~3ヶ月
3.限定部門での本番導入特定部門での実運用200万円~400万円3~4ヶ月
4.全社展開成果を基に他部門へ展開300万円~600万円4~6ヶ月

最小限の機能で価値を検証できるPoC(Proof of Concept)から始めることで、初期投資を抑えつつ、段階的な機能の拡張が可能です。この段階的アプローチでは、たとえAI導入が思うように進まなかったとしても、小規模な失敗から軌道修正できるのが利点です。

既存サービスを活用する

AIをゼロから開発するのではなく、市場に出回っている既存のSaaSやAPIを活用することで、大幅なコスト削減が可能です。以下に目的別おすすめのSaaS型AIサービスを紹介します。

目的おすすめサービス月額費用目安導入期間
チャットボットChatbot、Karte Bot、AITalk5万円~20万円2週間~1ヶ月
画像認識Google Cloud Vision、Amazon Rekognition従量課金1~2週間
音声認識Google Speech-to-Text、Amazon Transcribe従量課金1~2週間
需要予測ABEJA、Planner、DataRobot20万円~50万円1~2ヶ月
文書解析Amazon Textract、Azure Form Recognizer従量課金1~2週間

API連携による開発コスト削減効果は非常に大きく、自社開発と比較して開発期間を1/3に短縮できるケースも珍しくありません。

オープンソース技術を活用する

オープンソース技術を活用することで、大幅なコスト削減が可能です。以下に主要なオープンソースAIライブラリとその特徴をまとめました。

分野主要ライブラリ特徴適した用途
機械学習全般TensorFlow
PyTorch
scikit-learn
高い柔軟性
大規模コミュニティ
豊富な事例
汎用AI開発
研究開発
プロトタイピング
画像認識YOLO
OpenCV
TensorFlow Object Detection
高速処理
実装事例多数
事前学習モデル
物体検出
顔認識
画像分類
自然言語処理Hugging Face
BERT
SpaCy
最新モデル
多言語対応
高精度
チャットボット
文書分類
感情分析
音声処理Librosa
Kaldi
DeepSpeech
音声特徴抽出
音声認識
多言語対応
音声認識
話者識別
感情分析

オープンソース活用の最大のメリットはライセンス費用の削減です。商用AIプラットフォームでは年間数百万円のライセンス費用が発生するケースもありますが、オープンソースであれば基本的にはライセンス費用がかかりません。

AI導入のROI(費用対効果)の考え方

AI導入の判断の材料として有効なのが、ROI(費用対効果)という考え方です。ここでは、ROIをどのように計算し、評価すべきかを解説します。

ROIの計算方法

AI導入の費用対効果を測定するための計算式は「(利益額 ÷ 投資総額)× 100」です。以下にそれぞれのAI種類におけるROIを紹介します。

AI種類投資総額目安年間効果目安ROI回収期間
チャットボット500万円1,000万円(人件費削減)200%6ヶ月
画像認識1,000万円1,500万円(検品精度向上)150%8ヶ月
需要予測1,200万円3,000万円(在庫最適化)250%5ヶ月
自動文書処理800万円1,200万円(業務効率化)150%8ヶ月
顧客行動分析3,000万円6,000万円(売上増加)200%6ヶ月

AIプロジェクトでは、利益の定義が難しいケースも多いため、正確な評価には工夫が必要です。初期費用(企画・開発費)だけでなく、運用費用(保守・更新費用)も含めた総額で判断すると良いでしょう。

ROIを高めるポイント

AI導入のROI(費用対効果)を最大化するためには、次のポイントを押さえましょう。以下に効果を高めるポイントをまとめました。

ポイント具体的な施策効果
明確なビジネス目標設定「問い合わせ応対の自動化率50%以上」「不良品検出精度95%以上」効果測定の明確化、投資判断の適正化
段階的導入と効果測定小規模PoCから始め、効果確認後に拡大失敗リスク低減、投資対効果の最大化
現場との密な連携開発初期からの現場担当者参画、定期的なフィードバック収集実用性の向上、現場定着率の向上
継続的改善とモデル更新定期的なデータ更新、性能モニタリング体制精度劣化の防止、長期的価値の向上
組織的なAI活用能力向上ユーザー教育プログラム、活用事例の共有会利用率の向上、新たな活用領域の発見

製造業の例では、全工程への一括導入ではなく、特定ラインでの実証後に横展開するアプローチを採用。ROIを当初の予測から大きく向上させることに成功しています。

AI導入に使える補助金・助成金

AI導入には一定のコストがかかります。しかし、一部の国や自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できるのです。以下におもな補助金・助成金制度をまとめました。

制度名補助率上限額対象
IT導入補助金1/2(通常枠)数十万円~450万円AIツール、クラウドサービス導入
ものづくり補助金1/2~2/3最大2,500万円AI活用による生産性向上
事業再構築補助金1/2~3/4最大1億円超AIによる業態転換・新分野展開
東京都革新的事業展開設備投資支援1/2最大1億円先端技術活用の設備投資
東京都先端テクノロジー活用推進2/3最大1,500万円AI・IoT等の先端技術活用

中小企業向けには手厚い支援制度が用意されており、AI導入のハードルを下げる大きな助けとなっています。また、東京都などの地方自治体も独自の支援制度を設けており、企業の所在地に応じた制度を調査することをおすすめします。

AI導入に使える補助金・助成金について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
関連記事:【2025年版】AI導入補助金で社内のDXを加速!制度の種類から申請方法までを徹底解説

AI導入におけるよくある失敗とその対策

AI導入は適切な計画を立てておかなければ、予算超過や期待した効果が得られないといった結果になりかねません。そこでここでは、AI導入におけるよくある失敗とその対策をまとめました。

成功確率を高めるために、典型的な失敗パターンを理解し、事前に対策を講じていきましょう。

「予算超過」のおもな原因と対策

ここでは、AIプロジェクトで予算超過が発生するおもな原因と対策をまとめました。

原因具体例対策
曖昧な目的設定と要件不足「AIを導入したい」という漠然とした目的具体的なKPIと要件の明確化
過度な期待と非現実的目標99.9%の不良品検出精度を要求現実的な目標設定と段階的高度化
データ品質・量の問題予想より不足・低品質なデータ事前のデータ評価と収集計画
コミュニケーション不足開発者と現場の認識ギャップ定期的な現場フィードバック
PoCの軽視実証なしで大規模開発に着手小規模検証の徹底実施
開発会社への「丸投げ」管理不足による品質・進捗問題プロジェクト管理体制の構築

機械学習プロジェクトの約60%がデータ関連の問題で予算超過するというデータもあります。また、「現場とのコミュニケーション不足」も見逃せない原因のひとつです。開発者と現場の認識のギャップがあると、完成したシステムが実務に適合せず、追加開発が必要になります。

「ベンダー選定」で失敗しないためのポイント

AI導入を成功させるには、適切なベンダーの選定が不可欠です。そこで、ベンダー選びで失敗しないためのおもなポイントを見ていきましょう。

評価項目チェックポイント重要度
技術力と実績類似業界での導入実績、AI開発の成功率、技術スタック★★★★★
見積もりの精査含まれる/含まれない作業の区分、追加費用発生条件、隠れたコスト項目★★★★
契約条件変更管理のルール、知的財産権の帰属、保守条件の詳細★★★★
プロジェクト管理進捗管理手法、課題管理プロセス、リスク管理体制★★★
コミュニケーション力打ち合わせ品質、専門用語の説明力、傾聴姿勢★★★★★

「データ準備」「システム連携」「運用保守」は見積もりに含まれていないケースが多いため、注意が必要です。

依頼するときは複数社に見積もりすることをおすすめします。同じ要件でも、複数のベンダーから見積もりを取ることで市場相場を把握することが可能です。

成功率を高めるプロジェクト管理

AI導入の成功率を高めるためには、適切なプロジェクト管理を実施していきましょう。以下に成功率を高めるプロジェクト管理のポイントをまとめました。

管理ポイント具体的な施策効果
明確な目標設定とKPI管理具体的な数値目標と定期測定方向性の明確化、軌道修正の容易化
段階的成果確認とフィードバック2~4週間スプリントでの反復開発リスク低減、早期の価値実現
現場との密な連携体制プロダクトオーナー設置、現場ユーザー参画実用性向上、現場定着率アップ

AI導入には「段階的な成果確認とフィードバックループの構築」が効果的です。また、いきなり大規模な一括開発をするのではなく、小さな成果を積み重ねるPoCアプローチをおすすめします。

まとめ:AI導入は一歩ずつ。まずはスモールスタートから始めよう

AI導入には、数百万円から数千万円という幅広い費用がかかります。重要なのは「目的に合った導入」と「適切なパートナー選定」です。SaaS型で小規模プロジェクトから試しながら、効果を見極めていき、本格導入を進めていきましょう。

プロジェクトの規模や目的、技術選定、データ準備の難易度によって費用は大きく異なりますが、適切に計画や管理をすれば、高いROIが期待できるはずです。

なおSHIFT AIでは、企業ごとの課題や予算に応じたAI導入の最適プランをご提案しています。専門コンサルタントが費用対効果の高い導入方法や補助金活用のアドバイスをトータルでサポートいたします。まずはお気軽に、無料相談をご利用ください。

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